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君は彼
「みーつけた」
その一言とともに目の前に現れたのは、青を基調とした着物を纏った女性だった。
口元は桜の花びらのようなふんわり膨らんだ桃色。目を閉じたらカーブを描いた滴がたまりそうなほどの長いまつ毛がくっきりと見え。袖の中からちらつく細い腕から伸びる手の指先は、空を撫でる際に音を奏でそうなほど艶やかで。
そして足は……
「足がねぇ」
「そりゃ、ねぇ。わっちはあやかし……みたいなもんやねんから」
桜色の唇から漏れる言葉は艶があるのに茶目っ気が見え隠れしたもので。
人にそっくりで、でも人ならざる者。
だけど、妙に惹かれるものがあり目を離せない者。
「あぁ……その目。間違いあらへん。ようやっと見つけた。ほな、暫くあんさんに憑りつくね」
そう言って、彼女は頬を染めて嬉しそうに微笑む。
それは初対面でも見惚れてしまうほど美しい笑みで。
――一体俺は
今、どういう状況なのだろうか。
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