年越しの夜に 1

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年越しの夜に 1

君に告白した夜のこと、覚えてる? 君はうつむいて言った。 「まだ忘れられない人がいるから・・・」と。 そして僕はその場から去ろうとする 君の手をつかんで言った。 「忘れなくてもいいから・・・ 僕を知ってほしいからつきあってほしい」と。 君はびっくりしたように顔をあげて 僕を見たんだ。 忘れられない人がいる君は まだ心のどこかで彼を思っている。 でもきっと君のことを好きな僕は 今の君のことが好きで きっとそれは誰かを愛した今の君。 ただ支えてあげたいと思った。 誰よりもそばにいて支えてあげたい。 君が泣いてるときにはそばにいて 抱きしめてあげたいと思った。 僕にできることは君と一緒にいること。 その涙がたとえ誰かのための涙でもいいと 思った。 誰かのために流す涙は きっと心の中から 痛みを流すためのものだから 一緒にいたい その気持ちだけだった。 ある時は電話していたら、涙声に変わって 僕は「すぐに行くからっ!」と言って 車で彼女の家まで行ったこともあった。 君の話を聞いていた僕は どんな時も君の話したいように 最後まで聞いた。 二人がどんな思い出を持っていたのか、 君の信じた言葉を何度も聞いた。 ぽろぽろとほほをつたう涙をぬぐいながら 話を続ける彼女に、 泣いていいよと言うとその涙の粒は ぽたぽたと床へ落ちた。 いつからだろう。 だんだんと笑顔を見せる君に 変わっていった。 僕はただただうれしかった。 君が少しでも笑ってくれるだけで うれしかった。 いつの間にか泣き顔よりも 笑顔が増えていった。 本当に元気になったら僕ではなく 他のところへ行ってしまうかもしれないと 思ったこともあったけど、 それでも構わないと思っていた。 いつか旅立ってしまう・・それでもいいと。 君の笑顔が見られればいい。 そのことが今は一番うれしいんだからって 思った。 付き合い始めて一年経って 初めて手をつないだ。 ある日、横断歩道を渡るときに 君は僕の手を握って「早く」と言って 走った。 僕はあっけにとられながら 君に導かれるように走った。 それから僕たちは自然と 手をつなぐようになった。 君がだんだんと元気になってきていて 僕はうれしかった。 続く・・・・
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