年越しの夜に 2

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年越しの夜に 2

夏が過ぎてだんだんと君が 元気になっていくみたいでうれしかった。 少しずつ笑顔を見せてくれるようになって 心から良かったと思った。 付き合ってるような 付き合っていないような微妙な関係。 友達といえばその域を 脱していないような関係。 それでも君と一緒にいられることが うれしかった。 いつか君に好きだと言えるような 恋人になりたいと思ってた。 大みそかの二日前、 僕はカウントダウンの後に 花火があるイベントに彼女を誘った。 「大みそかあいてるなら よかったら一緒に過ごそうよ」 「うん。カウントダウンなんて初めて。」とうれしそうに言った。 目の前の電光掲示板が少しずつ時を刻む。 だんだんと残り少なくなる今年の時間。 来年までの時間。 大きなスタジアムはほぼ満席で 僕たちは温かい缶コーヒーを飲みながら 待ち続けた。 いよいよカウントダウンまであと1時間。 「僕も初めてなんだ。 こういうカウントダウンのイベントって。」 「そうなんだ。なんだか楽しみだね。 わくわくしてくる。」 君の手を握りながら二人顔を合わせて 笑い合った。 あと30分。 君と一緒に年を越せること。 そのことが僕にとってすごくうれしいこと。 でも・・・君は?と思ったら なんだか急に不安になった。 「一緒に年越す相手が僕でよかったの?」 すると君は僕の目をじっと見て答えた。 「うん。一緒にいたいと思ったんだ。」 その答えに僕はとてもどきどきした。 「あのさ・・・」 「うん。なに?」 「…今年、僕はナツのことが 大好きだったよ。」 「うん。ありがと。 なんか・・まじで照れる・・・。」 「来年もきっともっとナツのことが 好きになると思う。」 「うん。私もね・・・ 拓のこと、もう好きになってる」 そして彼女は僕のほほにキスをした。 二人で下を向いて照れてしまった。 会場はだんだんとカウントダウンに 近づいている。 あと15秒。会場のアナウンスが始まった。 「15,14,13,12・・・・・・」 「10,9,8・・・・」 僕はナツの手をもう一度握った。 「6,5,4、・・・・」 「3.2.1.・・・・・ HAPPY NEW YEAR!!!」 僕はナツを抱きしめた。 そしてナツのほほにキスをした。 「さっきのナツのお返し。」 そう言うとナツは笑いながら 少し涙ぐんでる。 その顔を見たら僕まで すこし泣けてきてしまった。 周りの歓声がすごくて僕たちの声は かき消されてしまうほどだった。 「あ!見て!」 ナツがそう言った瞬間、花火が上がった。 キラキラ輝いて消えていく。 僕たちはしばらく花火を見つめた。 冷たかった手がもう暖かくなってる。 僕たちは二人くっつき寄り添いながら 花火を見た。 笑顔のナツが僕のそばにいて 僕はとてもうれしかった。 「ナツ、僕たちここから始まるんだね。」 「うん。拓のそばにいたい。 一緒にいたい。」 ナツが僕の肩に寄りかかった。 僕は忘れない。この日の花火を。 花火はイルミネーションのように 星空に輝き、 僕たちは夜空を見上げながら 幸せに包まれていた。 終
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