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おかえり
夕暮れ時
待ち合わせの時間は7時半
友達と話しながら帰る学生や
定時上がりの会社員の
家路に向かう人の流れに逆らって
僕は駅に向かう
待ち合わせの時間までには
まだだいぶあるから
さっき電車の中で続きが
気になっている文庫本を
もっと落ち着いた場所で
ゆっくり読みたいな
駅前の喫茶店が思い浮かぶ
今のターゲットはソファ
ゆっくり読めるような
落ち着いたソファのあるお店のリストが
頭の中で検索開始
お店と椅子がいろいろ浮かんで
今の状況に一番いいお店を考える
仕事が忙しくてといいながらも
このところ毎日会っている
忙しいと言いながらも
会うと言ってくれる君
この状況をうれしいと思う僕
君といられると自然にゆっくりできるんだ
ありふれた毎日に幸せを見出せる人間は
幸福だろうな
人生なんて幸せに生きたもの勝ちだって
僕はどこかでそう思いこんでいる
だって幸せそうに生きている人は
いつも僕の憧れなのだから
その笑顔はどうしてそんな風に笑えるのか
疑問符だらけなのだから
そんな風に笑っていられる人には
近づいてみたくなるよ
君はまだ会社の顔をしているだろうな
今日は残業できないってきっと急いで
会社を出てくる時間だろう
電車に乗りながら
まだ会社の顔をしているのかな
また今日も本屋さんに行って
3冊も買ってしまった
本は大体一目ぼれでどんどん積まれていく
全部読まないくせにね
買う時にはわくわくして買うのに
買って満足しちゃうタイプ
そして君に怒られるかな
また無駄遣いしてなんて言われそうだな
君とは価値観がぜんぜん違うから
おもしろいよ
僕が今夢中になっているこの小説を
君が読んだらなんて言うかななんて
想像するだけで楽しい
一緒にいて楽しいなんて初めてだよ
今までの恋は夢中になって
終わってたような気がする
失ってから大事な人だったなんて
はじめて気づく
終わってから素敵な人だったとか
もっと一緒にいたかったなんて思うのは
やめたんだ
もうそんなことがないように
大事にしたいなと思っているよ
君のことを
ありふれた毎日に当たり前の約束をして
君を駅に迎えに行くことも
待ち合わせをすることも
一緒にご飯を食べることも
一緒に帰ることも
改札口から流れて行く人の群れの中から
君よりも早く僕は君を見つけるよ
そして君は僕を見つけて
ほっとしたような笑顔を見せて
手を振りながら近づいてくるだろう
そして帰ってきた君に今日も言える幸せ
「おかえり」
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