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「いやいやお前どうしたその髪。自分から赤鬼に寄せて来てんじゃん」
1限終わり。ギターボーカルの犬塚 旬が俺の髪型にツッコんで来た。何故か中学2年からずっと同じクラスである。"あ"と"い"だから学期初めは常に席が近い。
黒髪で真面目そうだが全然ゲス野郎だ。こいつが今の彼女と元カノがちょっと時期被りしてたのを俺だけが知っている。
しかし散々だった。電車折り返しただけで色々ミスって1限は半分くらい終わってて、しかも朝から世界史とか眠すぎて寝てたらめちゃくちゃ怒られた。知らんよ。時間割どうにかしろ。
「ん、由美ちゃんがどうせなら赤くしたらって」
「それ……絶対遊ばれてるだろ。」
「いーや、そんなことない。見てこのやりとり!絶対俺に惚れてる。」
俺は犬塚に携帯の画面を見せつけた。
赤鬼『言われた通り髪赤くしたよ!どう!』
由美『ちょwwほんきwwwやば』
赤鬼『ヤバいかっこいいっしょ?』
由美『』
「いや既読スルーじゃん」
「由美ちゃんは真面目なの!12時過ぎたらちゃんと夜寝る子なの!」
「ふーん。」
犬塚が携帯をタプタプしている。
「前から思ってたけど、この子どう見ても彼氏持ちだろ」
「はぁ!?」
「ほら」
犬塚が見せてきたインスタの写真。由美ちゃんが……
「彼シャツ!!!」
これはあれか、彼氏んちにお泊りしちゃったよアピールにも見えがちなぎりぎりの、それでいて普通にオーバーサイズで可愛く見えるやーつ、
「そもそも文化祭から2ヶ月以上経っててデート1回とかお前」
「いーんだよ。俺は、彼女はいらねぇの。女の子は楽しくお話するだけでじゅうぶーん。」
「………はぁ?ちょっと何言ってるかわかんない。由美ちゃんいらねぇなら俺が…」
「それよりさぁ!Slumberのミックス聴いた?あれベースと音程被せてるシンセの音量が絶妙でものすごいエフェクトかけてんなって思ったら別トラックで、でも混ざって聴こえるからすごくて」
「はいはい。赤鬼。お前はもうそれで良いよ。」
「……何が?」
俺は動きを止めた。
「お前は、高校卒業までに"卒業"出来ねぇってこと。」
そつ、ぎょう?そ、あぁ、卒業ね。
「うっせ。お前みたいに女食い荒らす趣味なんて無いほうがマシだわ」
「知ってるか?それ、強がりって言うんだぞ。」
「クソ由美ちゃん繋いだ上でお前の今カノに全部バラしてやる」
「お前聞こえてんじゃねぇかよ!」
クソ犬塚。どうせ俺は、年齢=彼女いない歴、ですよーっだ。それが何だよ。音楽のが大事なんだよ。
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