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昼休み。ベランダは寒いけど日が差してポカポカしている。
「俺最近、感動したことあってさ。」
「大丈夫?その話面白い?赤鬼のその入り方で面白い話あったことないけど」
「面白くは、ねぇ。」
去る猿股。こいつはうちのバンドのドラムだ。隣のクラスだけどよく昼にベランダで一緒にいる。
「待って、待って!」
「団子くれる?」
猿股は甘党だ。そして可愛い顔をしてやがる。仕方なくこちらのポテチをやる。猿股が座った。
よーし良い子だ。
「でね。Jr.がさ。Bruno好きって言ってたんだよ音楽番組で。」
「ふんふん?」
「……すごくね?」
…………。
「もうちょっと。もうちょっと説明おねしゃす」
ちなみに、Jr.とはかの有名な男性アイドルグループの名前。Brunoは今年のグラミー賞を総ナメしたR&Bユニットである。
「いや、だってさ。夢とか希望とか言ってるイメージじゃん、Jr.って。」
「止めて赤鬼、お願い。Jr.批判は燃えるから止めて。」
「批判じゃなくてイメージだって。俺別にJr.の"monster"って曲のベースとか好きだし。」
「マジで」
「聴く?」
プレーヤーから流して、ヘッドホンの片方を猿股の耳に当ててやる。
「………かっけぇ。」
「だろぉ!?」
この曲はなかなかすごい。まずコード進行が意味不明なのに完成度高い。そんでグルーヴがあると思う。
「ちょっと待て。何の話してたんだっけ。」
猿股、口にチョコついてるよ。
「Bruno。」
「そうそれ、それの何がすごいの?」
「だからぁ、Jr.の人たちは、アイドルの音楽しか聴かないのかなって思っちゃってたんだよ、俺は。考えても見たらさ、そりゃ芸事で生きてるんだからBrunoとか聴くよね。それでさ、全然違うわけじゃん。」
「何と、何が?」
「BrunoとJr.が。」
「そりゃそうよ!遺伝子レベルで違うでしょ。」
「そう、違うんだよ。違うけど、ちゃんとやってるワケじゃん。普通、あのBrunoのパフォーマンス見たら、俺らの曲ポップ過ぎん!?って思うと思うんだよね。俺らと同い年くらいの盛りたい野郎たちなんだし。でもさ、自分たちに与えられた曲をちゃんと歌って踊って、でちゃんとかっこよくなるワケじゃん。Jr.は。」
「あ、そゆこと。」
「そ。だから感動した。俺は深く反省した。これまでの偏見を。」
「でも俺は次のライブでJr.のコピーやるとか言われたら拒否するよ」
何だそれ。猿股おまえ俺の話聞いてたかこの野郎。
「何でだよ」
「ドラムむずいから」
「はぁ?」
「打ち込みばっかなんだよ。クリック聴くの嫌いなの俺。」
「そんなんお前、俺が合わせるしアレンジすりゃ良いだろ打ち込み無しに。」
「えーやだぁ〜」
「までも、コピーは、しないわな。」
「………ならこの会話しないで?」
ポテチは、あと二枚になっていた。俺は慈悲深い。
「いる?」
「いる。」
あ、こいつ二枚とったクソ。
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