好きだから

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「あ。えっと……そっか男の人が好きだったんだね。今まで気がつかなくて、本当にごめんなさい。それであの、相手の方が貴方の彼女? 彼氏?」 本心からそんなことを言い出しかねない。 万が一そのまま別れ話にでも発展されては、本気の本気でシャレにならなかったりするのである。 「そ、総長……と副総長さんは、でで出来ているんだ!? うわぁぁああん!」 「はあ!? い、いや違うから。今のは総長の嫌がらせで俺らキスとかしてないから」 「うわぁぁあ、嘘つきぃぃー!!」 ひとまず彼女の件は置いといて。 自身の目と鼻の先で起きた(目撃してしまった)あまりの出来事に、平凡はもはや号泣するしかない。 一瞬とはいえ期待が大きかった分、その落胆と衝撃は凄まじいものであった。 しかし。 平凡少年と写真を撮った側からは分からなかったのだが、総長の唇は相手のそれを外れ、実際は頬にすら触れるかどうかというギリギリで止まっていた。 恐らく写真では本当にキスをしているように見えるだろう。 全てが計算の内である。恐るべし、総長。 スマホを奪い必死で否定する副総長の方が今は泣きたい気分なのだが、それも自業自得。 むしろ(意図的に総長の逆鱗に触れたにもかかわらず)この程度の仕返しで済んだのだから、マシな方だと言えなくもない。 ア然とする周囲の一人に、総長が何か合図を送る。 慌てて何処かへ消えた後しばらくして、小さな酒瓶を手に駆け戻った不良くん。 どこで調達してきたかは不明だが、それを紙コップと共に総長へと渡す。 「おい」 「ふえぇぇ……総長、好きぃ……ぐすッ、ううう……副総長なんか副総長なんかっ。うぁぁぁあーん!」 誤解ながら、もはや恋敵と化した相手には『敬称をつけて呼んでやらない!』ことを決めたのだろう。 まあ、総長を呼ぶ際には元々『さん』付けをしていないため、何だかよく分からない自分ルールなのだが。要するにそれだけ総長への想いは本気らしい。 そんな平凡の首根っこを掴み 「消毒しろ」 と酒の入った紙コップを、泣き止まない相手の鼻先に近付ける総長。 「消毒といったらアルコールだろ」 「いやいや、傷口かよ」 「……はぅん」 「うわっ、え。どうしたの平凡くん?」 .
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