好きだから

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副総長がツッコミを入れる中、少年は匂いだけで酔っ払ってしまった。その間わずか数秒。 ふにゃりと脱力した身体を総長が片手で支えてやる。 「酒弱っ!?」 泣きながら眠ってしまった平凡少年を一旦抱き上げ、その場で胡座をかく総長。 自分の膝の上に座らせ、もたれかかる小さな身体を抱きしめると、事の経緯を見守っていた周囲の奴らに指示し屋上から出ていかせる。 もちろんそれは副総長にも同様だ。 が、そこですんなり出て行かないのがこの男だった。 「ねぇ総長。俺に嫌がらせする暇があったら、素直に平凡くんの気持ちに応えてあげたらー?」 「黙れ。さっさと行け」 「ふーんだ、総長の助平。酔っ払って寝てる相手に手を出すのは反則じゃね?」 「煩せえ。くだらねー真似しやがって」 「そのおかげで平凡くんを抱っこ出来てる訳でしょ? 皆追い出しちゃって、二人っきりで何する気なんだか。うっわ、やーらしぃ」 「てめえ……」 「ははっ、じゃあねー」 ニヤニヤ笑いながら去る悪友。 やがて平凡少年と総長、二人きりの屋上。 「おい」 「………………」 「俺を好きなら、あんま簡単に他の男に触らせてんじゃねーぞ」 「んっ……ふゃ……ぅ……」 望み通り消毒してやるよ、と何度も啄むようなキスを繰り返す総長。 「お前は覚えてないだろうが、ファーストキスはとっくに俺が頂いてんだよ。この酔っ払いが」 異常なまでに酒に弱く、匂いだけで記憶を失くしてしまう少年。 本人は忘れているが以前、総長の見ている前で同じ事がありその時にファーストキスを奪われていたらしい。 「つか……あん時はお前からキスしてきたんだけどな」 くくっ、と笑う姿は真に愉しげだった。  *** 数時間後、何故か寮の自室のベッドで目が覚めた平凡少年。 虫にでも刺されたような跡を首や胸……もしかすると脚の付け根辺りにまで見つけるかもしれない。 「何だろこれ、虫かなぁ。まさかダニ? うわわっ早く布団干さなきゃ! い、いやどうせなら布団掃除機を買った方が」 だが、彼はまだ気付かない。 大好きな総長に溺愛され、チームの不良達もとっくの昔にそれを知っていることを。 .
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