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「ジュンさん、南無」と静かに手を合わせる逸花と、「アニキ、全く信用されてねーな……。これも日頃の行いか」としみじみ語るチハル。
そんななか紗綾に迫られたジュンは、半泣きでチハルに助けを求めた。
「ねえ、チハルも見てないで紗綾ちゃんの誤解をとくの、手伝ってよ!」
凍りついた笑みを浮かべながらジュンの肩を揺さぶっている紗綾の迫力をみて、チハルはにこやかに笑顔で親指をたててて言った。
「無理だな!」
「諦めないで……!」
半泣きのジュンを横目に、逸花はスマホを取りだし、ジュンに電話をかけた。
目の前にいるそこはかとなくジュンに似ている少年のポケットが揺れた。
「あの、もしかして君、ジュンさんのスマホ持ってる?」
ひきつった笑みを浮かべながら、逸花が小さくなったジュンに話しかける。
「だって僕がジュンだからね!」
紗綾に肩を揺さぶられながら、ジュンは親指をたててて言った。
「うう、埒があかない! じゃあチハルさんに……!」
逸花はチハルに電話をかけた。そばにいたそこはかとなくチハル似た少年のポケットが揺れた。チハルはスマホをポケットから取りだし、通話ボタンを押すと、
「? もしもし?」と頭に?を浮かべながら電話に出た。
「なんでスマホを携帯してないんだよ!」
逸花は突っ込みながら、スマホの通話ボタンを切った。
「いや、なにがしたかったんだよ、お前……」
物言いたげに近づいてくるミニサイズのチハルに、逸花はため息をつき、嘆いた。
「緊急事態だって言うから、慌てて来たのに……。理由も告げずに見知らぬお子さまのお守りを押し付けるなんてあんまりだよ~! ジュンさんとチハルさんのバカ~!」
沸々と沸き上がる怒りをぶちまける逸花の叫びに、ミニマムジュンの肩を揺さぶっていた紗綾が反応し、ピタッと動きを止めた。
「さ、紗綾ちゃん……?」
恐る恐る紗綾の顔を覗きこむジュンに、彼女は黒い笑みを浮かべた。
「そうよ、中で待てばいいんだわ……」
「な、中でですか?」
緊張した面持ちで逸花が紗綾に近づき、尋ねた。
「ええ。だってここは彼らの家だもの。
最悪、ジュンさんやチハルさんが帰ってこなくても、カオルくんかアサギさんには会えるはず。そのときにこの子達の正体を尋ねればすむ話だし、この子達には罪はないわ。
そうと決まれば、寒いから中に入りましょうか、みんな」
紗綾に背中を押され、ミニマムジュンとミニマムチハルは部屋の中へと入っていった。その後に続いて、逸花と紗綾も中へとはいる。
「紗綾さん、笑顔が恐いっす」
「ふふふ。当たり前でしょう? 逸花ちゃん。私、怒っているもの」
「おおう。普段怒らない人を怒らせると怖いって本当だったんだ……」
紗綾の迫力にびびりつつ、一行はリビングへと向かった。
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