初詣に来ました(不純な動機で)

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初詣に来ました(不純な動機で)

「わー、すごい人混み! 離れないように手を繋がないとですね、チハルさん♪」 「な、俺をガキ扱いするんじゃねぇ!」  人がごった返すなか、ちみっこ二人をつれ、逸花(いつか)たちはとある神社に来ていた。  なぜこの神社に来たかと言うと。チハルとのおいかけっこに疲れ、リビングの床にひれ伏していた逸花(いつか)が、ふとこの神社を思い出し、口にしたのがきっかけである。 「そういえばご近所に、なんでもひとつだけお願いを叶えてくれる神社っていうのがあるんですよ。行ってみません?」 「お前……神頼みってまた……」  同じく床に転がっているチハルが、逸花(いつか)の突拍子もない提案に呆れていると、逸花(いつか)がガバッと起き上がり、チハルに向かって早口で捲し立てた。 「kissがダメなら、神頼みで対抗ですよ! ファンタジーな現象には神通力で対抗です! オリエンタルらしく!」  逸花(いつか)の力説にチハルが負け、ジュンや紗綾(さあや)が思いの外乗り気だったのもあり、四人は神社に行くことになったのだった。  人でごった返す神社の境内をみて、紗綾(さあや)は、一人ため息をつく。 「確かに人が多いわ。ぼく、離れないようにお姉さんとお手て繋いでおこうね」  ジュンは差し出された手をしっかと両手で握りしめると、精一杯のキメ顔をして言った。「紗綾(さあや)ちゃん、可憐なその君の手、もう離さないよ」と。そんなジュンの様子に、紗綾(さあや)は「もう、おませさんなんだから」と笑顔で受け流していた。        
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