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そんな二人を後ろから見ていた逸花は、二人のことを羨ましく思っていた。手を繋ぐことを諦めきれず、隣を歩くチハルにもう一度思いきって声をかけようと視線を向けた、その時。
「チハルさんが、いなーい!」
慌てて周囲を見渡すと、人波にさらわれ流されているチハルの手が視界にはいり、逸花は慌ててその後を追った。
「紗綾さん、先にいってて下さい! 私、チハルさんを回収してきます!」
前方を歩く二人にそう言うと、逸花は人を掻き分け、来た道を戻っていった。前方を歩いていた二人が後ろを振り返る頃には、逸花の背中が人混みの中に小さく見えるくらいまでになっていて、とても合流出来そうにない。
「逸花ちゃんがあんなに遠くに、引き返さないと……」
慌ててその背中を追いかけようとした紗綾だったが、ジュンがそれをひき止めた。
「今引き返すと行き違いになるよ。先に参拝を済ませよう」
「でも……」
「大丈夫だよ、ふたりならきっと合流出来るよ。信じて進もう、ね?」
紗綾は不安げに、ジュンの目を見つめた。優しくてあたたかみのあるその眼差しは、紗綾が愛してやまない恋人のそれと同じものだった。紗綾の瞳が、静かに揺れる。
「……もしかして、本当に……ジュン……さん……なの?」
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