初詣に来ました(不純な動機で)

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 一方チハルはというと、人に流され、鳥居前まで戻っていた。遠くで逸花(いつか)の声が聞こえ、それに答える。手を高く伸ばし、大きくジャンプすると、逸花(いつか)がそれに気づいた。人混みを掻き分け、手を伸ばす逸花(いつか)に、チハルも精一杯手を伸ばす。  人混みの中、なんとか手を繋ぐことができたふたりは、人にもみくちゃにされながらも繋いだ手を頼りに二人の距離を縮めていく。やっとの思いで顔を合わせた瞬間、二人はその場で抱き合った。 「もー! チハルさんのバカ~!」  半泣きで抱きつく逸花(いつか)の背中を撫でながら、チハルはばつが悪そうに言った。 「悪かったよ、流されると思ってなくて……」 「うう。見つからなかったらどうしょうかって、スッゴク不安だったんですよ!  もう、少しは自分がちっちゃいってこと、自覚してください!」 「うっ。わ、わかったよ……」  逸花(いつか)はチハルから体を離すと、泣き腫らしたぐちゃぐちゃの顔で、チハルの目をまっすぐに見つめて言った。 「……じゃあ、今度はちゃんと手を繋いでいく?」 「……わかったよ」  照れ臭そうに目をそらしながら、チハルはおずおずと小さな手を差し出した。逸花(いつか)はその手をとると、しっかりと握り返した。 「ここを出るまで、ぜーったい離しちゃダメですよ?」 「はいはい」 「ぜーったい、ぜーったいですからね?」 「わかったって」 「……本当にわかってる?」 「わかったから、ほら、逸花(いつか)。 ……行くぞ」  小さな手につれられて、逸花(いつか)は再び、境内の中へと入っていった。
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