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その頃、ジュン達は。人混みを避け、本殿から離れた場所にある人気の少ない社務所裏まで来ていた。
「本当に、ジュンさんなの……?」
「そうだって、さっきから言ってるよ」
「……もし、それが本当なら……私、私……」
震える手で口許を押さえ、紗綾はその場に力なくしゃがみこんだ。
「……紗綾ちゃん、大丈夫?」
心配そうな顔で、紗綾の顔を覗きこむジュンに、彼女は震える声で言った。「……ごめんなさい」と。
「私、ジュンさんが一生懸命に話してること、信じてあげられなかった。その上、ジュンさんのこと疑って……最低よね」
ジュンは紗綾の震える背中を優しく擦りながら、穏やかな口調で言った。
「普通じゃないことが起こったんだ、君が動揺するのも仕方がないよ。
僕ももう少し、上手く状況説明できればよかったんだけど……」
「……ジュンさんは悪くないです。
私を、せっかく頼ってくれたのに……」
ジュンは静かに、紗綾の手を握った。
「だってしょうがないでしょう?
君が……僕の好きな人なんだから。
そんなところも含めて、僕は君が好きだよ。だからもう、泣かないで」
「ジュンさんは……優しすぎます。
私、ひどいことたくさん言ったのに……。
もっと怒ってください、もっと……叱ってください」
「じゃあ、そうだな。もとの姿に戻ったら、うんと君に甘えてもいい? ……ベッドのなかで」
紗綾が顔をあげると、優しげなジュンの眼差しとぶつかった。ほっとして思わず、笑みがこぼれてしまう。
「……ジュンさんのえっち」
「男はみんな、好きな子にはえっちだよ」
おでことおでこがくっつき、キスできそうな距離に二人の顔がある。
「ねえ、お姫様。
君のkissで僕にかかった魔法を解いて」
二人の影が、静かに重なった。
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