16人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「あああ、あの、ジュンさん、紗綾さん……! いいいつの間に……!」
「ごめんなさい、なんか、入ってくるタイミングがわからなくて……」
申し訳なさそうに頭を下げる紗綾に逸花もつられて頭を下げている。そんな二人をよそに、チハルが口を開いた。
「ジュン、お前……もとに戻ったのか」
「お陰さまでね。チハルも戻れたみたいでよかったよ。今夜はお赤飯だね……!
逸花ちゃんとの初Kiss、おめでとう!」
「はあ!? してねーし!」
顔を真っ赤にして勢いよく起き上がり、力一杯否定するチハルに、ジュンは生暖かい笑顔を向けた。
「隠さなくてもいいのに……。
お兄ちゃん、嘘つかれて寂しいな……」
「隠してねぇから!」
顔を真っ赤にして否定するチハルと、全力でそれにうなずいている逸花の姿を見て、ジュンと紗綾は生暖かい笑顔を向けたまま、うんうんと頷いている。
「あ、あの……。本当に、Kiss、してないんです」
「わかっているよ、逸花ちゃん。そういうのは恥ずかしい歳なんだよね。うんうん」
「おい、ジュン。聞けよ人の話。
だからしてねーんだって!
その、なんつーか、神様にお願いしたらもとに戻ったっつーか……」
「わかったよ、そういうことにしておこうか。とりあえず」
菩薩顔で頷くジュンに、チハルが吠えた。
「だから、やってねーっつてんだろおおお!」
境内にチハルの絶叫が響き渡り、雀が数羽、地面から飛び去った。
結局その後、チハルと逸花は生暖かい眼差しを二人から向けられ、いたたまれない気持ちになりながらアサギの到着を待つことになったのであった。
最初のコメントを投稿しよう!