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それから少しの間があった。
帰宅したのか部活に勤しんでいるのか、教室にはもう他のクラスメイトはいない。
「……その気持ちね、わかるよ」
海原はゆっくりと口を開く。しんと静まった教室にその声はよく響いた。
「私もすっきりしたから」
彼女は張り詰めていた表情を緩める。そして、どこか吹っ切れたように笑った。
その笑顔はいつもの海原のもので、僕のずっと欲しかったものだ。
「でも、まだまだ足りないよね」
「え?」
「あと99個、言えなかった言葉があるんでしょ?」
そして彼女はにやりと意地悪く笑って言ったのだった。
「残りは大学の広い教室で聞くからね!」
(了)
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