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三年目
「言えなかった言葉は今はどこにいるの」
「ちょうどローマを折り返したところだ」
「え、折り返しちゃったの」
「予定より早くローマに着いてしまって本人も戸惑ってるみたいだ。その結果、来た道を辿るという愚行を選択してしまったようだな」
「アドリブが苦手なタイプなのね」
放課後の教室。
僕と海原はセンター試験模試の問題と解答、結果判定表を机の上に広げながら進捗状況の報告をしていた。
「そんなことよりどうだった、判定。俺C判定なんだけど」
「私はB判定。でも今回は運がよかったっていうのが大きいかな」
「いやでも運も味方の内って言うだろ」
「でもまだまだ安心できないよ。来月の本番ではどうなるかわからないんだから」
彼女がはーっと吐いた息は白い。エアコンを付けたばかりでまだ教室の空気が温まっていないせいだろう。
とても静かで、時間すら止まっているように感じる。
しかし時間は止まってくれない。
学校は冬休みだが、受験生に冬休みはない。
僕と海原は来月のセンター試験に向けて、学力底上げの真っ最中だった。
「ギリギリまでやらなきゃだな、これは。負けられない戦いがここにはある」
「いや今回に関しては本当にそう」
「賭けるのは未来。決めるのは努力」
「お、青春ドラマが始まりそう」
「始まるのは青春ドラマかキャンパスライフか」
「うわー! 夢のキャンパスライフおくりたーい!!」
騒ぎすぎて疲れたようで、海原は机に置いていた生姜湯をごくごくと飲み、ぷはーっと息を吐いた。
「……後悔してる?」
唐突に彼女は聞いた。
それはきっと去年の修学旅行での約束のことだ。
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