三年目

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*** 「さすが東京。3Dだ」 「そりゃどこでもそうでしょうよ」 「でかい、ドリーム、どこでも電車」 「さすが東京だー!!」  僕たちはあみだくじで決めた行き先をこれでもかというほど楽しんで回っていた。そして夕暮れになっても下がらない熱量のまま、計画通りに最終目的地である東京タワーの展望台へと辿り着いた。 「綺麗……」  息を吐くように海原が言う。  展望台からは一面に夜景が広がっていた。車のブレーキランプがここまで綺麗だと思った瞬間はこの日が初めてだった。  「これは、忘れないな」  本心からそう思った。  きっとこの時の感動を、僕は何十年経っても忘れることはないだろう。 「私も多分そうだと思う。ここに来るのは何年後になるかわかんないけど」  彼女は呟くようにそう言った。他の班員はどこに行ったんだと見回すと、ギフトショップに釘付けだ。情緒の欠片もない連中だな。 「海原って大学は近くのとこ行くんだっけ」 「そ。親がね、一人暮らしさせるのは心配なんだって」  もう少し信頼してほしいもんだよ、と彼女はそれでも幸せそうにぼやいた。 「まあそれなりに名の通った大学が近くにあるなら、わざわざ出なくてもなんとかなるよな」  僕はフォローするように言ったが、彼女から返ってきた返事は予想外のものだった。 「ねえ山峰。私と同じ大学行かない?」 「え」 「あはは、急にごめん」  言葉を失った僕を見て、海原は笑った。  そして、今から柄にもないこと言います、彼女はそう宣言した。 「放課後の教室で山峰と騒ぐのが楽しかった。それが、もうすぐ終わるってのが寂しかった。だからもうちょーっとだけ引き延ばせないかと悪足掻きをしてみたのです」  それだけ、と彼女は光の群衆を見つめる。 「でも山峰のやりたいことを止めるつもりはないので! 行きたいならローマにでも行っちゃえよ!」  海原はそう言って笑った。  僕はそれを見て。 「僕には夢も希望もない」 「どうした急に」 「やりたいこともなりたいものもない」  でも、と僕は続ける。 「海原と大学の広い教室で騒ぐのは楽しそうだと思った」  海原はこちらを見た。 「今、夢が見つかった」  僕は言う。 「一緒に夢のキャンパスライフを目指そうぜ」 「……約束ね」
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