愛しのあの子へ不器用な僕からのI Love You

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「しかし尚斗がクッキーを作りたいとはねぇ」 「まぁ……あれだけ手の込んだもの用意してもらったら、既製品をポンってわけには」 「たしかに」  他愛もない話をしながら駅前商店街を抜け、住宅街へと進んでいく。 「昨日の占いで『大切な人に感謝の気持ちを伝えることで、運気が上昇。手作りのお菓子をあげると喜ばれます』って言ってたし、タイミングよくじーさんがチケット貰ったからって奨めてくれたし」 「昨日……? それって当日のみ有効じゃないの? 今日になったら占いの助言って更新されない?」  ハッとしたような顔で亮平が言う。  たしかに、【今日の占い】というくらいなのだから、その日一日しか効果がないのかもしれない。だとしてもだ。 「俺、自分に都合のいい占いは、一週間ぐらい有効だと思ってっから」 「うわ、でた。尚斗のマイペース持論。でもアレだね、占い最下位だと地味にズルズル引きずるタイプ!」 「あー……わかる。最下位だってわかった途端に「今日外に出たら災厄に見舞われるから学校休む」ってマジ顔で言ってくるタイプだ」 「……あのな」  亮平の言葉に頷きながら昭彦が追言する。  ちゃんとした〝友達〟という位置づけになってからというもの、二人の俺に対する発言は斟酌もなにもあったものではない。文字通り、散々な言われようである。とはいえ、占いの結果を気にするようになった今となっては、二人の言うことも当たらずしも遠からず、というやつであるが。 「お、着いた着いた。ここだ」 「へぇ、こじんまりしてるけどテラスもあるし綺麗なお店だね。これ、一軒家を改装してるのかなぁ」  昭彦の言葉に亮平が外観を興味深げに眺めながら辺りを見回す。住宅街にひっそりと佇む、瀟洒(しょうしゃ)な建物。流行りのカフェらしくテラスを上がった脇にイーゼルが置かれていて、ブラックボードには今日おこなわれる催しの案内が書かれている。普段ならこの板にはランチメニューなどが書かれているのだろう。小窓のついた扉にかかるプレートはOPENとなっているから、入っても問題なさそうだ。  ドアノブに手をかけてゆっくりと回し、扉を開く。チリンと鳴る澄んだドアベルの音──中からほのかに甘い香りが漂ってきた。
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