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 翌日、目が覚めても檻の中でごろごろ寝転んで背伸びをする。匂いを嗅ぐとおいしそうな香りがして、視線を匂いの方向へ向けるとなんと朝食がオードブル式だった。簡単な朝食メニューなんだけど様々なニーズに合わせてメニューを取り揃えられている。久しぶりの朝ごはんよりもオードブルに目を輝かせ、10分程行ったり来たりして悩んだ挙句選んだのは目玉焼きとベーコンにご飯でした。お代わりでカレー食べれたらいいなぁと思ったけれど最初に盛り付けたご飯でお腹いっぱいになってしまった。毎日オードブルなら僕は体育館に住んでもいいかな……とぼんやりと思った。  朝食を食べた後は体育館内が自由行動範囲として開放された、他にはシャワー室と図書室が解放されていた。僕は体育館に積まれた部屋の中でのんびり二度寝をしようと寝転がる。 「レーズン、レーズンってば!」 「んん……らむ?」  体育館に設置された時計を見ると短い針が10時を指している、僕の檻を両前足で叩いて呼んでいるのはまさしくラムだった。ちょっとびっくりするが眠気が重なりふわふわした返事になってしまう。 「ラムだよっ! 遊びに来たんだ!」 「遊びに来たの……ここで何するの」 「…………何しよう!」  無計画、だけどラムがしたいことは手に取るようにわかる、無言の間にあんなことやこんなことを考えて顔を紅潮させるんだからバレバレだよ。 「臭い嗅ぎたいんでしょ」 「うんっ! …………ボランティアの方がいて嗅ぎづらいよ……」 「そんなことだと思った。図書室に行こう、いつもみたいに膝枕して臭い嗅いでいいよ」  僕はベッドから起き上がりラムの手を握り図書室へ急ぐ。ボランティアの人が学校の見取り図を貼ってくれていたから図書室へ迷わず向かうことが出来た。何となく握ったラムの手だったけれど、細くてすべすべする指を意識してつい指の腹でつまんでしまう。指の曲がる関節をくにくに。しっかり爪を切られて丸く整えられた爪をすべすべ。親指と人差し指の間のお肉をぷにゅぷにゅと触りぬく。 「れ、レーズン?」 「図書室付いたよ、早速臭い嗅ぐ?」  ガラガラと扉を横に開いて入った図書室の中はしっとりした本の香りと学校独特の床の匂いで満たされていて、ラムの好きな匂いが漂ったらすぐばれてしまいそうな気がした。本棚が沢山並んでいて、その中央に大きな机がある。  僕は軽くラムの顔を覗うと、顔を紅潮させて恥ずかしそうに吐息を吐いていた。妄想だけで興奮しすぎてしまったのだろうか、おトイレの方が匂いを感じられやすいかもと思ったが流石にトイレの匂いで興奮できるタイプではないか。 「恥ずかしいから……奥で、本を読んでもいい?」  図書室が解放されているというのにもかかわらず部屋には誰も居なかった。だからと言って後から誰かがやってくるかもしれない。ラムの意見に賛同して、手をつないだままゆっくりと図書室の奥の方へ、本棚と本棚の間へと姿を隠した。 「ありがとうレーズン……」 「いいよべつに……どうやって、臭い嗅ぐ?」 「ぎゅってしてもいい……?」  ラムは静かに、か細いウィスパーボイスのような囁き声で、片手を口元にあてて、もう片方の手で僕の服の袖を掴んだ全力の甘え仕草で僕を魅了させてきた。そんなことしなくても嗅がせてあげるのに。 「いいよ、おいで」
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