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先を見つめると壁にかけられた小さいボールが袋に入れて壁にかけられていた。何となく幼稚園を想像した。幼児も攫って教育しているのだろうか。
「ボールあったねー」
「あったよぼーる! えへぇ、あそぼー!」
もちろん僕達を捕まえた施設の職員が廊下の奥からやってくるのだが、こちらを振り向いた男の子はそれに気づくわけもなく、男の子からボールを取り上げて来た道に向かってUターンする。
「待ちたまえ!」
僕達を引き留める声を無視して遠くへ走っていく、「待ってー!」と男の子が後をついてくるのが面白くなって自分の部屋まで走った。自分の部屋がある廊下の奥まで移動するとまた扉があったのでその先へ進んでいく。
「待って、待ってよ~~!」
「ボール遊びをしたいと言ったのはだれかな~?」
「ボール遊びはしたいけど、追いかけっこは、やぁー!」
檻部屋を抜けて廊下を走るその先は行き止まりだった、Uターンしても良かったけど疲れたのでその場で座り込んだ。
「おいついたぁ……」
へとへとの様子の男の子がボールをタッチすると、その場でぐでぇと倒れ込んだ。クリーム色の髪の毛は、汗でほかほかにふんわりと仕上がっていた。
「あつい、あついぃ……」
「へとへと?」
「へとへとー!」
簡単な会話をしていると白衣を着た職員がやってきて僕と男の子の手を引っ張り、部屋へと連れていかれると思った。
ほんの少しのお遊びに僕は満足して檻の中に放り込まれる瞬間を待っていたけれど、檻には入れられずにガラス張りの部屋に閉じ込められて、歯科の椅子みたいな物に座らされた。部屋の中には白衣を着た職員がふたりと僕、なんだかこそばゆい。
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