はじまりは那須野ボッカ

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

はじまりは那須野ボッカ

「ね、まずは食べてみて」 なずなから押し付けられた それ、を口にしたのがすべてのはじまりだった。 どこで手に入れたのか。 那須の銘菓だという。 見た目は東京でも買えそうな普通の菓子だ。 あれだ、ナボナとかブッセとかそういうやつに似ている。丸いスポンジでクリームがはさんであるんだろう。 あむ、と口に入れた瞬間、 何かほんのりと固い食感のものに触れた。 「??」 む、バターか? 中にバターがまるごと入っている! 「そうなの。那須野ボッカっていうの。おいしいでしょう?」 甘いクリームとほんのりとした塩気の バター、これはうまい。うますぎる。 風が語りかけます。おっとうっかり埼玉県出身であることがばれてしまう。 いやいや驚いた。口の中がまるで牧場だ。 「もう一個、くれ」 「ごめんね。もうないの」 「じゃあどこで買えるんだ?」 「残念ながら、これは東京では買えないのよ。那須の明治屋っていう和菓子屋さんで売ってる。それか那須塩原駅のお土産屋さんかな」 むむ。那須か。行ったことないな。 「あ、通販はあるけどね。早く食べたいって顔してる。今から行かない?」 「はあ? これから?」 「新幹線に乗ればすぐ着くから」 なずなはさっそくスマホで路線検索をはじめた。 「明日から連休だし。手伝ってほしいことがあるの。お礼は那須野ボッカ食べ放題 これでどう?」 じゅわりと唾を飲み込んだ。 あのバターの海で溺れられるならいいか。 俺となずなは切符を買い、そのまま新幹線に 乗り込んだ。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!