0人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
はじまりは那須野ボッカ
「ね、まずは食べてみて」
なずなから押し付けられた
それ、を口にしたのがすべてのはじまりだった。
どこで手に入れたのか。
那須の銘菓だという。
見た目は東京でも買えそうな普通の菓子だ。
あれだ、ナボナとかブッセとかそういうやつに似ている。丸いスポンジでクリームがはさんであるんだろう。
あむ、と口に入れた瞬間、
何かほんのりと固い食感のものに触れた。
「??」
む、バターか?
中にバターがまるごと入っている!
「そうなの。那須野ボッカっていうの。おいしいでしょう?」
甘いクリームとほんのりとした塩気の
バター、これはうまい。うますぎる。
風が語りかけます。おっとうっかり埼玉県出身であることがばれてしまう。
いやいや驚いた。口の中がまるで牧場だ。
「もう一個、くれ」
「ごめんね。もうないの」
「じゃあどこで買えるんだ?」
「残念ながら、これは東京では買えないのよ。那須の明治屋っていう和菓子屋さんで売ってる。それか那須塩原駅のお土産屋さんかな」
むむ。那須か。行ったことないな。
「あ、通販はあるけどね。早く食べたいって顔してる。今から行かない?」
「はあ? これから?」
「新幹線に乗ればすぐ着くから」
なずなはさっそくスマホで路線検索をはじめた。
「明日から連休だし。手伝ってほしいことがあるの。お礼は那須野ボッカ食べ放題 これでどう?」
じゅわりと唾を飲み込んだ。
あのバターの海で溺れられるならいいか。
俺となずなは切符を買い、そのまま新幹線に
乗り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!