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ユウジは口をあんぐり開けてアホみたいな顔してた。「あのな」って最初の一言がちょっと裏返ってて、動揺しまくってるのが見て取れる。
「俺、男は無理だから。相手ならアプリで」
「セックスなんかできなくても、俺はユウジがいい」
ユウジは息を飲む。
「ピアノだって、弾けなくてよかったんだ。ずっとユウジの為に音楽やってきたから。俺は、ユウジがいればそれでよかったんだ」
ようやく、言いたかったことが全部言えてスッキリした。これでもう嫌われようが拒絶されようがしったこっちゃない。
胸のつかえがすぅっとなくなっていく。俺は、多分、ユウジに面と向かって好きだって言いたかっただけなんだ。
ユウジは口を開いて何か言い掛けて、目を伏せた。
それから、「んなこと言うなよ・・・」って苦しげに眉間に皺を寄せて口元を歪ませる。
「俺は、お前にどうしてやることもできないし、ピアノなんかって言うなよ。
俺は、お前のピアノがすげえ好きなんだよ」
身震いした。だって、ユウジは間違っても俺のことをーーー
「それに、お前とその・・・付き合うとか無理だけど、お前は俺のバンドの仲間で、カホの大好きな叔父さんで、ユカリの大切な弟で、もう家族みたいなもんだろ。それじゃダメなのか?」
コイツ何言ってんだよ。ダメに決まってんだろ。
でも、ユウジはそんなふうに思ってたんだな。
ずっと、ユウジと姉ちゃんとカホが一つの家族で、俺は部外者なんだって肩身が狭かった。
家族か。
まあでも、アプリみたいにセックスしたら終わりの関係よりも、熱が冷めたらハイサヨナラな恋人同士よりもマシかもな。
しょうがねえな。今はそれで我慢してやるよ。
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