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「ユウジ、うち来る?」
「行く」
無防備すぎて笑える。でも、久しぶりにユウジの音が聞けるのが楽しみだ。
セックスは誰とでもできるけど、音楽を一緒にやれるのはユウジだけだ。
マンションの3階にある部屋に入ると、ユウジは「割とキレイにしてんじゃん」と見渡した。
ほとんど寝るためだけの場所と化しているからな。外でナニやってんのかは言わずもがなだ。でも、誰も連れ込んだことはない。ユウジの気配とか匂いとか掻き消えそうな気がして。
ユウジは真っ先に寝室に入ってギターを持ってきた。
「おっ、チューニングしてある。すぐ弾けるじゃん」
弦を鳴らして、嬉しそうに目を輝かせている。
リビングのソファに座って、音で遊ぶみたいに弦を弾く。
「ユウジが宝物だって言ってたから」
俺は電子ピアノの前に座った。背中から、「イーグルスのDesperade」って、前と同じようにリクエストを投げつけられる。
ユウジの方を見れば、ふっと笑みを溢して、長い指からメロディが流れ落ちた。俺はゆっくりとそれを追いかける。和音で相槌を打つような、単純な伴奏だ。
ーーーーWhy don't you come to your senses?
ーーーーThese things that are pleasing you
Can hurt you somehow.
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