さおりの存在

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しばらくしてから俺は立ち上がり霊安室の外に出た 香坂さんから重要な話があると言われていたからだった 俺と香坂さんは病院の待合室横にある喫茶コーナーの椅子に座った 「それにしても、よく私を見つけられましたね」 俺は日本を出てからの6年間 友人の片瀬にしか連絡先を教えていなかった その片瀬が俺の友人だということを兄は知らない なのになぜ片瀬を見つけ出せたのかが不思議だった 「実は、さおりから聞いていたのです  13年前、私はさおりの引退と共に  芸能事務所を辞めました  私にもさおりと同じように結婚したいと思う人が居たからです  さおりの居ない芸能界に未練が無かったというのもあります  私が入社して初めてマネージャーを務めたのがさおりでした  私達は売れない時から一緒に頑張ってきた同士で  二人はどんなことも話し合って来たんです  さおりが結婚しても私は年に一度  宮崎からこの街へさおりに会いに来て  お互いの近況を報告し合っていました さおりが結婚して5年程経った時でしょうか 慧斗さんの話になったのです さおりは故郷で別れたっきり 会っていないことを寂しがっていました
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