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資料を探しに訪れた図書館で、一人の少女が私の目に止まった。
「珍しい本を読んでるね」
つい声を掛けてしまった。
少女は特に驚く様子も見せず、下に落としていた目を私に向け、
「この本好きなの。
もう何度も何度も読み返してる」
嬉しい言葉が返ってきた。
「その本、実は……
私が執筆したものなんだ」
照れ臭さを見せながら話す私に、
「へぇー」
それほど関心を示すことなく静かに返事した。
「まぁ、全然売れなかったけどね」
頭を掻きながら自虐を言うと、
「最後がハッピーエンドだったら売れてたかもね」
少女は本を閉じ、カーキ色のマフラーを首に巻き立ち上がった。
その瞬間を私は見逃さなかった。
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