肉じゃがの行方

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 土曜日の朝からインターフォンに叩き起こされた。  宅配便の兄ちゃんから寝ぼけ眼で受け取った小包は意外と冷たくて重たかった。  送り主が母親であることを確認し、冷蔵便と書かれたシールを破って開封する。  中から出てきたのは、大きめのタッパーに入った肉じゃがと、その隙間に詰め込まれたガラクタの数々。その中にこの時計もあった。  タッパーには、手紙とも呼べぬメモ書きが張り付けられていた。 「あなたが大好きだったお爺さんの、思い出の品です。後、あなたが好きな肉じゃがも入れておきます。食べてね。母より」  文面から見ても、どちらが彼女にとって優先であるかは一目瞭然。  肉じゃがが好物なのは事実だが、それを免罪符か引き取り料に利用しているようにしか思えない。
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