肉じゃがの行方

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 受話口から飛び出してきたのは、明るい母親の声だった。 「もしもーし」  こちらの用件は分かっているはず。  にも拘わらずお気楽な声に少しだけイラっとする。 「肉じゃがありがとう」 「どういたしまして。ちゃんとご飯食べてるかなって」 「また何かいくつか入っていたけど?」 「お爺さんの部屋を片付けてたら、また色々出て来てねぇ。あんた、お爺ちゃんのこと大好きだったでしょう?」 「前にも言ったけどさぁ、うち、狭いんだから場所ないよ」 「じゃあ捨てれば良いじゃない」 「そっちで捨ててって言ってんじゃん」 「お爺さんが全部あんたにあげるって言ったんでしょ。だから新しいのを見つけたら、気を利かせて毎回送ってるんじゃない」  好きなのを持って行っていいとは言われたけれど、全部貰うとは言っていない。  まあ、その辺りを話していても水掛け論になるだけなのだが。 「とにかく、あんまり送ってこないでよ」 「はいはい」  電話はそれで切れた。  これが溜息をつかずにいられようか。
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