肉じゃがの行方

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 目覚まし時計と肉じゃが以外、箱の中に入っていたのはどれも本当にガラクタだった。先の潰れたペンとかぼろぼろの布切れとか。  肉じゃがと時計だけを取り出し、後は部屋のすみにほったらかした。  燃えないゴミの日にでもちょっとずつ出していくしかない。  心苦しいが、実際、場所はあまり無いわけで。  爺さんゴメン。  ともあれ、朝から疲れたので、ひとまずシャワーを浴びに行く。  それから身支度を整えたところで、ぐうと腹が鳴った。  今こそ肉じゃがの出番。  半分ほどを器に盛って電子レンジへ。  中古で買った古臭い奴だが、まだまだ現役だ。  残りはタッパーのまま冷蔵庫に入れておく。こいつも中古。  このあたり、俺も爺さんの教育を受け継いでしまっているのかもしれない。  温め終わりを待つ間、何となく目覚まし時計のゼンマイを巻いてみたところ、なんと動き出したのである。 「壊れてなかったんだな……」  意外と大きな秒針の音に少し驚いた。物珍しさと面白さで、思わず眺めてしまう。  もちろん電子レンジが温め終了を告げるまでの間だけだが。  ほかほかになった肉じゃがは、懐かしい実家の味だった。  うちの肉じゃがはメークインを使うのが特徴で、おかげで煮崩れたりはしない。汁は濁らず、ジャガイモにも歯応えがあって、俺はこれが好きだった。世間に溢れるねっとりほろほろとしたジャガイモの肉じゃがは、正直あまり口に合わない。
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