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「あの」
Kは再び叫び、女の腕を掴んだ。
思いのほか力が入り、女は一瞬怯(ひる)んだ。
Kは焦り、掴んだ手を離してこう続けた。
「こんなことをして、すみません……。でも、自分は昔、自分の命を助けてくれた人に、言われたことがあるんです。この写真を、しかるべき人に渡しなさい、と。そして、そのしかるべき人が、あなたなんです。自分には、それが分かるのです。」
女が渡されたのは、1枚の真っ黒な写真だった。それは、何が写っているのかも分からないほど、すすこけていた。
Kが必死に訴える様子を見て、女はその写真を受け取ることにした。
そして死ぬまでその写真を大事にすることを約束し、2人は別れた。
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