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丁寧に手入れされた袴を着たその老人は、Kの事情は一切問わず、彼を寺に住まわせた。
その代わり、Kが唯一手に持っていたその1枚の黒焦げの写真を見てこう言った。
「全焼した家屋から、奇しくも灰にならずに残った写真というのが、1枚だけ出てくることがある。その写真も、恐らく何らかの力で守られていたのだろう。」
何らかの力、とKは繰り返した。
「そう。そしてそれは、不死の象徴としてご利益があると捉えられる一方で、その強い力のあまり、持ち主の心の在りようによっては死の方向へ引きずられてしまうこともある。だから、あなたが気持ちの整理ができたとき、その写真を、生きたいと心から願う人に譲ってやりなさい。」
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