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ゆっくり穏やかにキスが続いているうちに『ドン!』という音がわずかに聞こえてきて、真海は顔を離して窓の方に目を向ける。
「花火・・・一緒に見よ?」
続きがしたそうに切ない眼差しを向けてくる悠馬の唇に指を添えて言う。
「お、おお・・・。」
悠馬が頷くと真海は唇から手を離し彼の分厚くて大きな手に指を絡めた。
「い、いや、今手汗ひどいから、その。」
悠馬が慌てて手を引っ込めて着ているTシャツで拭こうとすると真海がその手をぐいっと引っ張る。
「そういうのいいから。」
「え、い、いいのか・・・!?」
信じられない気持ちで真海の横顔を見つめる。花火が夜空に花開くと同時に彼女の顔にも笑顔が咲いた。
「あっ、私あの花火好き。小さいいろいろな色の花火が同時に開くやつ。」
「あ、あれは千輪って言うらしいぞ。」
「もしかして予習してきたの?」
「わ、悪いか!?」
「ううん。」
真海は心がじわっと温かくなるのを感じて、繋いだ手をぎゅっと握った。まるでそれがスイッチであるかのように、悠馬は自分の鼓動が速くなるのを感じた。
「ス、スマイルとかハート型とかキャラクターの顔になってるやつとかもあるよな。メッセージ花火とかいうのもあるし。と言っても花火が文字の形になってる訳じゃなくて、アナウンスでメッセージ読んでもらって花火が打ち上がるんだよ。」
「え~っ!それいいな。ロマンティック。」
「・・・そうか。」
───じゃ・・・プ、プロポーズする時にはそれで・・・うーん、でもそれだと言うタイミングが夏限定になっちゃうな・・・いや、秋も花火大会あるか。
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