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シャワーを浴び終えた悠馬が部屋に戻ると、真海はベッドの端に腰かけて窓の外の夜景を眺めていた。
遠慮がちに隣に座りしばらく沈黙が流れる。
「・・・来ないの?怖じけづいちゃった?」
真海は前を向いたまま、さっきトランプの前に悠馬が言ったのと同じ言葉をつぶやいた。
「いいのか・・・?」
「うん・・・。」
真海の方に体を向けると彼女は目を伏せた。その両肩にためらいがちに手を添えてゆっくりベッドに倒す。
顔が向かい合うと真海が目を上げて視線がぶつかった。
それが合図であるかのように悠馬はおでこ、頬、耳、首・・・ひとつひとつ確認するようにふわりとキスを落とす。
「本当に、いいのか・・・?次、唇に触れたらもう俺止まらなくなりそう・・・。」
「ここまで来て私が『やっぱり嫌。』とか言ったらどうするの?」
「何もしねーよ。真海が嫌がることはしたくないから。」
「・・・結構甘いこと言ってるよ、それ・・・。」
真海はとろけそうな顔になる。
「お前!この距離でそんな顔すんな!俺今崖っぷちなんだからな!」
焦る悠馬を見て真海は微笑んだ。
「・・・ここがN極で・・・。」
真海は悠馬の唇に人差し指で触れてから、同じように自分の唇に触れる。
「・・・ここがS極・・・でしょ・・・?」
「だ、だから・・・?」
「言わせるつもり!?」
拗ねるように唇を尖らせ頬を膨らませる。悠馬が片手でその両頬の下の方を掴んでグッと握ると頬がしぼんで唇が更に飛び出した。
「ぷぷっ!」
「ちょっと!変な顔させないで!」
怒る真海の頬を手で掴んだまま悠馬の顔が降りてきて、二つの唇が引き合う磁石のようにぴったりと繋がった。
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