白い金平糖 ~平行~

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気持ち良く晴れた翌朝、璃子が会社の入っているビルでエレベーターを待っていると隣に一直が並んだ。 「・・・おはよ。」 「・・・おはようございます。」 先程別れたばかりなのに何故かもっと長く会っていないように感じる。 「っあ~、眠い。誰かさんのせいで寝不足なんだけど。異動したばかりで仕事に支障出たらどうしてくれるんだよ。」 一直は横目で璃子をにらんで口を尖らせる。 「あたしだって、体中痛いんだけど。誰のせいとは言わないけどね。部活でめっちゃ走り込んでもここまでなったことないのに。」 璃子も負けじと口を尖らせる。 「でさあ、昨日の勝負は俺の勝ちってことでいいよね?だって璃子、あんなにさ・・・。」 思い出してにやつく一直を見て、璃子の頭に昨晩浴びせられた攻撃的で甘い言葉の数々と彼の表情や動き、そして自分の反応がよみがえる。 「か、一直こそ大変なことになってたじゃない?あたしの勝ちだと思うよ。」 これ以上ないくらい真っ赤になりつつも反撃する。 「!?・・・ま、まぁ、璃子も思ったよりすごかったんじゃない?自分で言うだけのことはあったっていうか・・・俺あんな風になったの初めてだし・・・。」 一直も負けないくらい赤くなったところで、エレベーターが降りてきて扉が開いた。 二人とも心にも体にもすっかり熱さが戻って来てしまっていて、今すぐ相手に触れたい気持ちではち切れそうだ。 「・・・決着、つけようか。」 一直がエレベーターの中を見て言うと璃子もうなずく。 「負けないからね。」 乗り込むと扉が閉まりきらないうちに唇が重なった。
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