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現在の街の堤防。
ヒロキ、着いていた手にミカの手が触れ、あわてて手をひっこめる。
ミカ「ヒロキ、何だか元気ないね」
ヒロキ「そう見える?」
ミカ「うん、何だかちょっと疲れてる」
ヒロキ「やっぱそう見えるか。俺さ、ミカが引っ越してから中、高とこの街にいたんだけど、それから一人で東京に引っ越したんだ。
ミュージシャンになりたくてさ」
ミカ「ミュージシャン?すごいじゃない」
ヒロキ「でも実際はさ、東京行ってもただバイトだけの日々で…東京にはすごいやつがいっぱいいてさ、俺なんか全然叶わないんだ」
ミカ「それで、諦めて帰って来たの?」
ヒロキ「ちょっとね、久しぶりにこの街のこの河の景色が見たくなってね。昔は楽しかったなあって…」
遠くを見つめるヒロキ。
ミカ、ヒロキの頭を優しく撫でる。
その手をつかみ、包み込むヒロキ。
少し悲しげなミカの顔がすぐそこにある。
ヒロキ「俺、ほんと子どもだったよな。小学校低学年の頃はしょっちゅうミカと遊んでたのに…周りの目を気にして、ミカのこと避けたりして」
ミカ「そうだね、ちょっと、寂しかったかな?」
ヒロキ「ごめん。俺さ、ミカのピアノすごく好きだったんだ。ミカとあまり遊ばなくなってからもよく家の前までミカのピアノの練習聞きにいってたんだ。だからミカが海外に引っ越すって聞いてすごく寂しかった。手紙もさ、書いたんだけど、結局渡せなかった」
ミカ「そうなの?読みたかったな」
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