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青年団の詰め所で子どもたちの身元を聞き出し、恩田は一人一人話を聞いて回った。しかし、誰一人として隠れる彼女を見た子はいなかった。それどころか、彼女はわくわくとして、誰よりも早く隠れたがったという。
「かくれんぼをしようと言い出したのは、彼女だったんだ?」
恩田の問いに、子どもたちは次々応える。
「そうだよ。神社でやろうって」
「でも、僕らはいやだったんだ。あの神社って、隠れるところが少ないんだよね」
「それに、神社で遊んじゃいけないって」
「もし入っちゃいけないところに入ったりしたら、神隠しにあうから」
「もしかしたら、あの子、祭具庫に隠れたのかも、入っちゃいけないのに」
「それで、神様が怒ったんだよ、きっとそうだよ」
「神隠しだ」
「それか、古井戸の呪いかも」
最後の最後に、新しい単語が出てきた。それを恩田が尋ねると、その男の子は「よく知らないんだけど」と前置きしながら、話してくれた。
「祭具庫の裏の、もう少し奥のほうに、古井戸があるんだ。でもそこには近づいちゃいけないんだ。昔、そこで水を汲んでいた女の人が、井戸に落ちて死んじゃって、まだ、その人は見つかってないんだって。それで、その人の幽霊が出るんだって」
「じゃあ、そこは探しに行ってないんだね?」
「うん。でも、近づくはずないよ。だってあの子、とても怖がりだもん」
「じゃあなんで、そんな怖いところがある、あの神社で、かくれんぼをすることになったんだい?」
「知らない。でも、神社でやろうって、あの子が言い出したんだ」
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