chapter.2-1

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       *  童顔でおかっぱの少女は、まっすぐにあたしいる、古井戸のほうに駆けてきた。そしてあたしの姿を認め、ハッとなって立ち止まった。ずいぶんと困った顔だった。 《どうしたの?》とあたしは声をかけてみた。彼女の身体が、びくりと震えた。  そうか、彼女はあたしの姿が見えて、あたしの声が聴こえるのね。  珍しい子。  たぶん、あたしと同い歳くらいだろう。  あたしが死んだ歳と。 《何をしているの?》あたしが尋ねると、彼女は小さな声で、「かくれんぼ」と答えた。 《そっか、ここに隠れるの?》  こくりと頷く。 「だってここ、誰も来ないもん。見つからないから」 《ずっと、見つからないかもしれないよ?》 「いいよ。最後まで見つからずにいれば、願い事が叶うから」  何それ。じゃあ、あたしだって、願い事が叶うんじゃない? だってあたしは、ずっと誰にも見つからずにいるんだもん。  そう思うと、意味もなく腹が立った。純粋無垢な少女。願い事を叶えたい少女。あたしより、幸福な少女。この子は、あたしより長く生きていく―― 《ねえ、隠れるならいいところがあるのよ?》 「どこ?」 《絶対に見つからないところ》  そう、あたしみたいに。
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