12月18日

プロローグ

　12月18日、クリスマスの1週間前。

　街中の街路樹にはイルミネーションが瞬き、5番街のティファニーは恋人たちで賑わっていた。瞳を輝かせて、ショーケースを覗く女性と、財布を心配しながら作り笑いをする男性。もちろん、クリストファーもささやかなプレゼントを買いに来たのだが、気持ちはどんどん落ち込んで、笑顔のドアマンを横目で眺めて入口を素通りするありさまだった。

　マクニール氏は、クリスマスが嫌いだった。1年で2番めに嫌いな日が12月25日、クリスマスその日だった。
　では1年で1番嫌いな日は？
　その日が12月18日、つまり今日だった。12月18日とは、クリストファー・マクニール氏本人の誕生日だった。

　もちろん、彼も最初からクリスマスや誕生日を嫌いだった訳ではない。幼い頃は、人並みにクリスマスや誕生日を指折り数えて待つ純粋な少年だった。だが、10歳の誕生日とクリスマスのほんの些細な出来事が、クリストファー少年を、この時期になると毎年這い上がれなくなるほどの、暗い穴の中に突き落としてしまったのだ。