プロローグ

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プロローグ

 クリストファー・マクニール氏は機嫌が悪かった。  焦げ茶色のコートのポケットに収まっている最新型のスマートフォンに、昨日メッセージが届いた。数ヶ月前から付き合い始めた恋人、赤毛の可愛い看護師からだった。 愛するクリス。ごめんなさい。 明日はどうしても会えなくなりました。 急に大学の親友が来ることになって、卒業以来のクリスマスパーティーをしようって。 私が来ないと話にならないって言われちゃった。 だから、ごめんなさい。 でも、来週のクリスマスには、ゆっくり会えるからね。 XOXO ジェーン 17 December  もちろん、こんなメッセージをもらえば、マクニール氏でなくても、誰だって機嫌が悪くなるというものだ。彼が”気分の階段”を数段転げ落ちたのも無理はない。だが、そもそもその階段は、既に暗い暗い穴の中に立てかけられていて、どうあがいても、クリスマスまでに明るい光の届くところまで這い上がるなんてことはできそうになかったのだ。
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