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+++++Side "Selna"
「…それで、私のところに相談しにきたの?」
とある自宅近くの喫茶店。
アイスココアのストローを回しながら、私、永久井せるなは話しかけた。
「急にうちの近くに訪ねて来るなんて珍しいと思ったけど……」
「ああ…最近、あいつの様子が物凄くおかしいんだ。
なんか俺を避けているように見えて仕方ない…」
「ふーん。さては喧嘩でもしたわね?」
「何でそうなるんだよ!」
「…あっ、ごめん。喧嘩はしてない、わけだ」
「…ああ。でもあいつが、俺を避けているように見えるのは確かだ。」
「何でまた?」
「……知らねー。俺が知るか。」
どこか素っ気無い表情で返答する目の前の人物…羽積修平さん。
今日はその親友で、私の一応の知人でもある江口神楽も同席している。
普段ならとっくに私と修平さんは口喧嘩を始めているはずなのに、今日は何か様子が違う。
そもそも、嫌いな筈の私に彼が相談してくること自体何かがおかしい。
いったい何があったのだろうか。
「そこで、だ。いきなりだがお前にぜくろの代わりに罪人退治してほしい!」
「えええ!?無理よそんなの、大体私の能力死神と違うし!」
「大丈夫、何とかなる!」
「はあ…で、それって緊急かなんか?」
「割と緊急」
「…わかった。何ができるかわからないけど力を貸してあげる。…ん?」
突然、携帯電話の着信が入った。会社からだった。
「ごめん!会社から緊急招集入っちゃったから、私行って来るわね」
「えー。会計どーすんだよ!?」
「取り敢えず私の分はこれで払ってて!」
と、千円札を1枚置いて私は店を飛び出した。
+++++Side "Kagura"
…せるなが行ってしまった。…俺一人でどうしろと!?
「まあ、会社じゃーしょうがないよな。あいつも忙しいんだよなあ、なんだかんだで。」
「あー…仕事だしな…社会人は大変だな」
「俺も割と人の事言えないけどな。」
修平がため息をついた。
「あいつも、そうだったな…忙しいって言って飛び出してばかりで」
「あいつって、奴か。」
「ああ…『死んだ』、けどな…」
「は!? 死、んだ…?!」
「正確には、『俺が殺した』ことになるんだろうな。
実はちょっとした衝突が起こって、精神的に俺、参ってたらしくて…
言いたいことと全く逆なことばかりあいつに言って…言葉で人を殺してしまった。」
「……でもあいつ、人じゃなくて死神じゃ……」
「その後あいつは……力を解放して……そのまま……」
「!!」
「なんで本当のことをせるなに言わなかったんだ!?」
「……身体は残っているが……動かない。というか、正確には死んではいない。
精神的に殺したことにはなるが……だから彼女には言えなかった。」
「嘘をついてしまったわけか……」
「そうせざるを得なかったからな。」
俺は意を決して修平に問う。
「本当はどう思ってるんだ?」
彼の表情が変わった。
「……取り戻したい。もう一度。可能ならば……そして、全てを話して謝りたい。
俺は……あいつのパートナーであり、彼女でもある。その責任をとりたいんだ。」
「……あのな、いっとくが俺は能力者じゃないぞ;」
「分かってるさ。けど、必要なんだ。一つだけ方法があることがわかった。」
「方法?」
「それなんだが…」
その『方法』を聞いて俺は、目の前が真っ暗になった。
「は…それって…」
「能力の半減はおそらく避けられないだろう。」
「そんな!」
「もし仮にこの方法を試すとなれば…せるなの持っている魔力を必要とする分、
彼女の能力値の変動も避けることは恐らく不可能だろう。」
「……他に、方法は……」
修平は何も言わず首を横に振る。
「…んなわけねーだろ…」
俺が…俺が能力者なら…!
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