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「困り事がある時だけ来るんだよ、あたし等を何だと思ってんだろね」
「たまに帰って畑を見るとがっかりするよ、人のいう事聞いてないんだから」
顔がそのままで身体は人タイプ、人と変わらない者と種類は様々だが、ここの人達はストレスが溜まっているのは共通しているようだ。
こちらからすればこんないい施設に入り、好きな物を食べて生活出来るなんて羨ましい限りで将来こういう場所で暮らせたらと思う程だ。
ただ話を聞いている内にお婆ちゃんが生きてたらと変換するようになり、本当は愚痴の一つも零したかったのかもしれない。
貧しくて農業一筋で楽しみがあったのかと悲しくなってくるし、お婆ちゃん達のクレームを聞く気持ちで耳を傾けていた。
「何だい、お腹一杯になったら眠たいのかい?」
「いえ、ウチの祖母はもう亡くなっていて、こういう話も聞いてあげれなかったと思うと……」
瑠里は本当に少し瞼が重いようだが、私はやり切れない想いと反省モードで聞いていた。
「幸せかはその人の価値観だからね、でもずっと気になるのは忘れてないって事だろ?そういう気持ちを大切に墓参りしておあげなさい」
一瞬だけアドバイスをくれると婆さん達はすぐ愚痴に戻ったが、それでも聞き続けていると内容は心配・気になる事に変化していった。
イタチの世界では最近強盗に襲われる事件が多く、狙われているのは街の金貸し業者が多いらしい。
何故銀行ではなく金貸しなのかと疑問を述べると、その世界の金貸しは『秘密』を預かっている場合があるようだ。
金庫はかなり厳重で秘密の内容によっては他の世界に預けている場合もあり、バレる事はないらしいが、ここ数カ月で件数が増えているようだ。
イタチの世界に金貸しは小さな所で数多くあり、その国の警察が見回りをしているが同時に数か所襲われると、手薄になる場所が必ず出来る。
相手はそれを突いてくるようで、何か所か囮に襲い本命から監視を逸らす作戦で、怪我人や死者も出ているし商売柄困る者も沢山いて婆さんに相談に来たらしい。
「そういうのはウチに依頼した方がいいと思います」
「受付の木村さん宛で連絡したらいいけど、空蝉屋を通す感じになのかな?」
うたた寝をしていた筈の瑠里もいつの間にか起きていたが、そんな内容を相談されてもそれは婆さんだって困ると納得出来た。
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