楓の心配事

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翌日目が覚めてリビングに入ると、母は服を着替えて顔にファンデを(はた)いてるので、買い物に行くと思いきやお見舞いだと言い出した。 「えっ?昨日も付き添ったのに?」 「お婆さん達って仕事あるでしょ、お母さんが居ないらしいし何か役に立てないかと思って、金はないけど」 何となく藤井屋に行っても、いつも縁側で出会うのはあの婆さんなのでそうかなとは思っていたが、改めて聞くと何も言えなくなる。 それに比べウチの母はゴロゴロして暇だし、体型は別として女性なので、買い物も含め頼みやすい介護のおばさん的存在になれそうだ。 「和菓子も沢山頂いたし、まだあの金額分働いたとは思えないから、邪魔にならない程度に顔見せようかと思って」 「生理用品とかの買い物言いやすいもんね、介護のおばさん役でいいかも」 「失礼ね、キュートで茶目っ気のある人生の先輩だから恋バナの相手になれるし、イケメン達に買わす訳にいかないでしょ」 羽二重餅になっていると注意して、ティッシュオフしていたが、娘を誘わないのは前日に少し出勤になったからだ。 またお声がかかるかもしれないし、動かず待機していないと損だと言い家を後にした。 今回の休みは日用品と食料品の買い物や、王子達の散歩等比較的のんびりとした休息になったが、母は二日に一回のペースで見舞いに向かっていた。 私達も顔を出したいが知り合いの人も結構来ているらしく、少し落ち着いてからの方がいいとアドバイスを受け控えている。 次の休み辺りに行けたらと思いつつ支度をしていると、母は荷物をバッグに詰めていて明日から二泊でハツさんと出かけると浮かれていた。 イナリ達のおやつもあるので、職場に連れて行けというメッセージも伝わってくる。 「旅から戻ったらまた見舞いに行くけど、楓さん元気そうだし百合達に礼を言いたいらしいよ」 「元気な姿を早く見たいって伝えといて」 休みの日に見舞いに行くと追加で頼み、王子達を懐に入れ職場に向かい受付で木村さんに挨拶をした。 着替えを済ませ指示された部屋でコーヒーを飲んで待っていると、早速相談内容の依頼を受け、イタチの世界の仕事の説明が始まった。
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