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目が覚めると昨晩は気づかなかったが、ポットや制服が準備してあるので、着替えてからインスタントコーヒーの粉をカップに入れあんぱんを頬張った。
ブラウスに紺のベストにキュロット、赤いリボンをつけるようになっていて事務員らしさが出ている。
持参したウエストポーチに双棒を忍ばせ準備は完了し、ブラインドを開けて街並みを見下ろすと顔はイタチで身体は人のイタチ人間が多そうに見えた。
ゆっくりと支度をして荷物を持って下に降りると、既に事務所の電気がついていたので中に入った。
正面には受付があり、パーテーションで中は見えないようになっている。
ドアにも大きなベルがついているので、開けた時点で誰かが訪ねて来たのが分かる仕組みのようだ。
一応呼び鈴もあったがすぐに中から人が……いや、年配のイタチ人間が出てきたので挨拶をした。
「お話は伺ってます、中へどうぞ……」
顔はイタチで身体は人のタイプだったが、おばさん達が数名と、奥には責任者らしき者と数名の男性社員がいた。
朝礼が始まり私達の名も紹介されたが、予約の人や返済の相談を受ける人数等が読み上げられ皆メモを取っていた。
瑠里は受付やお茶出し、私は電卓等の担当になり先輩について教わるようだ。
おばさん達は小さな事は気にしないウチのドラム缶タイプの人が多く、責任者は大らかな人だが、この事務所以外にも何店舗か経営している社長のようだ。
午前中は個人の融資の申し込みが多かったが、返済を待ってもらおうと相談に来るイタチ人間も二名居た。
身なりもよく高そうな靴を履いていて若そうに見えるが、遊びの金を借りた感じに思えた。
最初の一人は見た目から貧しそうなオジサンだったが、社長は返済の期限を延ばし商売の方向性の相談は部下の男性に変わり、親身になってアドバイスしていた。
こんな感じなら街の人にはなくてはならない存在だと思うが、次の若者にはどういう対応なのか気になっていた。
書類の計算を電卓で弾いていたが、瑠里がお茶を出したところで話し合いが始まっていた。
どうやら若者はギャンブルにハマっていて何度も返済が遅れているらしいが、今回も懲りずに手を出し当てが外れたようだ。
生活の為ではなく、働きもせずギャンブルだなんてウチの昔の親を見ているようでイラつくが、どこの世界にもそういう奴はいるらしい。
ただ環境が違うのは身なりがいいし、そんな貧しそうな感じに見えないので、何で暮らしが成り立っているのか疑問だった。
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