楓の心配事

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「ここは比較的田舎だから強盗なんて来ない思うけど、お留守番してもらうからお菓子でも買って来てあげる」 「有難うございます、先輩気をつけて行って来て下さい」 弁当を広げたおばさんがコーヒーを淹れてくれ、皆親切でこういう職場で働いたら性格も良くなりそうだとパンを頬張った。 被害にあった他の事務所の話をしてくれ、早く捕まって欲しいと卵焼きを食べる先輩に大きく頷き相槌を打っていたが、平和な時間が一瞬で奪われる事になった。 ドアが開きベルの音で瑠里が受付に向かうと、両手を挙げて後ろに下がるので思わず先輩の前に立つ。 「金を出せ、騒いだり通報したら殺すからな」 上下黒の服装にキャップを被った姿は私達の制服を思わせるが、銃を構えた者が三人と大きなナイロンバッグを持った奴がこちらに向けて投げてきた。 入って来た強盗は全員で四人だが、入り口付近の気配を探り、ないのを確認したのでとりあえずはこの人数だ。 「私達は新人で今日は初出勤なんで、お金の場所が分かりません」 「先輩方は皆お昼に出ているので……」 「後ろにいるババアは違うだろ、早く金庫に案内しろ!」 女性に向けて銃を構える強盗に苛立ちが増すが、どうせこいつらは金庫に案内したところで本命の場所なら『秘密』も奪い皆殺しに違いない。 平和だったランチタイムに突如現れた盗人に、おばさんは怯えて身体が震えている。 早くしろと声を荒げる度に、顔色が悪くなるのでこの辺が限界だと思い瑠里に視線をやった。 「ちょっと、先輩が恐怖のせいで持病のギックリ腰が出たらどうしてくれんの」 「うるさい!場所が分からないお前から殺して……」 瞬時に瑠里が三人に攻撃し銃を奪うと、ナイロンバッグの男に二丁を向け残りは双棒のベルトに引っかけている。 私は一人ずつイザリ屋仕様の小さなベルトで縛り、目は男から離さず様子を伺っていた。 「えっ……、なっ」 余りにも瞬時の出来事で残された男は戸惑っていたが、ナイフを探り手に持つと瑠里に向けて距離を保っていた。 「それで最強忍者と戦うつもりか?貴様の刀と飛び道具、どちらが早いか競い殺されたいらしい」 瑠里は鷹の世界で狙撃の腕も磨いたので、自身をスナイパー忍者探偵Xと呼べとか調子に乗っていた位だ。 踵を返して入り口に走る男だったが、スナイパーが扉の前に稲膜をに張ってるので、どう頑張っても開かないだろう。 すぐさま手刀を入れベルトで縛ると、スマホで連絡していたので、ここでの仕事は終わりそうだと先輩に近づいた。
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