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「大丈夫でしたか?」
「ドラマの撮影かと思ったよ、でも……この歳になってこんなに驚く場面にあうとはおも……」
銃を向けられて怖かったのか、花柄のハンカチで顔を覆い涙を拭く先輩に、少しは役に立てて良かったと胸を撫で下ろす。
その間に瑠里は気を失っている強盗達を一か所に集め、作業員の如く働いていた。
普段でもドラム缶同様に力人と称賛しているが、こちらでは正真正銘力人マックスなので、手伝おうとしても足手まといになるだけだ。
一応こちら側ではチカラを使えば怪力にはなれるが、そうこうしている間に作業は完了していた。
「よし、念の為外も見回りに行ってみようか?車だったら仲間が潜んでるかもしれないし」
「そうだね、こいつらはヘルプに任せるとして用心しとこう」
仲間が周辺で待機していれば、戻りが遅いと不審に思い来るかもしれないし、足として乗り物を準備している筈だ。
先輩には仮眠した上で残りの弁当を食べて貰い、ベルトでしっかりと縛ってある襲撃犯はその場において階段を下った。
建物から少し離れた場所に大きめのバンが止まっていたので、瑠里はすぐさま歩いたが私は少し間を開け周辺にも気を配る。
車は全体が黒で外から窓の中が見えにくくなっているので、瑠里は助手席側のドアをノックしているが応答はない。
双棒に手を置きながら、助手席を開けチェックしていたが、車の中は空のようでこちらに視線を向けている。
入って来た強盗は四人だったし、もしこのバンが逃走車だとすれば、すぐ発進出来るよう運転手がいないのは不自然だ。
洋画でもよく見るシーンだが、大抵運転手を含め待機している者が数人いて、仲間が戻って来ると急発進し去っていく。
そこへ勇敢な主人公が車に捕まり、振り落とされるという展開は何度も見ているし、この犯人たちは囮襲撃までしてるので待機の仲間はいる筈だ。
時代劇・洋画・サスペンスを見慣れている私達は、すぐに周囲を警戒したが、目の前から買い物が終わって戻る先輩方の姿が見えた。
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