イタチクラブ

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王子達は高いご飯をガツガツと食べていたが、内容は悟が知っていると簡単に済まされ、体調に変化があればマジで連絡ねと言われ地下に向かった。 ゲージに入れられてるとはいえ、王子達は今からゆっくり眠るんだと思うと添い寝をしたい気分だったが、渋々扉を潜った。 イタチの世界の昭和の感じは、こちらの世界と変わらない雰囲気で何処か安心感が湧くが、昨日の事務所よりは祭りの中心部なのか出店が道路の脇を挟み賑わっていた。 「あのビルがイタチクラブの本部だが、挨拶は昨日済ませてるし続きの見回りに入る。今日のノルマを達成し帰る時に寄ればいい」 「誰もサポートに付かないんですか?」 「昨日は先輩がいた」 強面とは裏腹に真面目なリーダーは、呑み込みが早く一人立ちしたようだが、私達は未経験なので教えて欲しい。 目的は強盗の見回りだと分かっているが、イタチクラブの人と思われて本気の相談をされた場合焦りそうで怖い。 「どんな相談が多いんです?」 「いや……特に何もなく茶を出して貰って、祭りの話して次に向かう感じだから気にしなくてもいいが、強盗は時間帯関係ないから周囲に気を配っておけよ」 前日不意打ちに合っているし、二度とあんな怪我はしたくないので、気合いを入れてリーダーの後ろを歩く。 「そういえばイタチクラブの制服とか着なくていいんですか?」 こちらの世界のイメージだと、農協と市役所を足した感じと言われるとスーツとか制服だと勝手な想像をしていたが、イタチクラブの見回りは腕章をつけるだけのようだ。 黒のつなぎにキャップを被りリュックを持ってると、強盗と間違われそうだが、お茶目なイタチの絵がプリントされていて結構目立つ。 私達が入る事は報告済のようなので、リーダーは用意されている予備の腕章をくれ腕に装着した。 「イタチのマークがしっかり見えるようにつけろよ、そこ注意されたから」 「分かっておるわ、忍者探偵Xでもマークは大事だと心得ておる」 全然関係ないが余計な知識は養われてるようで、瑠里はつけ終わりイタチのプリントを見せていた。 一件目の金貸しの扉を開けると、腕章を見て受付の人に椅子に座るよう案内された。 お茶を出され世間話をリーダーが担当し、私達は周囲をさりげなく確認する。 客と思われる者が一人いたが、従業員達の素振りはいつもと変わらないし、強盗に脅されて帰るのを待っている雰囲気もない。 それでも咄嗟に刺された経験を踏まえて、あらゆる妄想でシュミレーションしていたが、念の為外の通風口を見ておきますと話は終わった。 事務所を出て周辺を回り、通風口の点検と言っているので不自然に思われないし少しの間ここに滞在して様子をみる作戦らしい。 「初めから外で待機でも良さそうだけど、強盗と鉢合わせするには、中にも入る必要ありますもんね」 「ああ、念を入れておかないと襲われた後だと全く意味ねぇからな」 暫く様子を見ていたが怪しい気配もなかったので、次に向かう事にしたが、二件目で嫌な空気を感じた。
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