イタチクラブ

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これからは犯人達と根気合戦になりそうだが、事務所の中に人質に取られている者が居た場合、何気なく探っていかないと死者が出てしまう。 イタチクラブ全員が帰らなかった事に対し、奴らは若干イラついてると思われるし、残ったのは女性二人なのでアクションを起こしてくれるかもしれない。 まずは慎重に人数を把握して速やかに攻撃し、前回のように外で待機している者がいて、遅ければ様子を見に来るというのも分かっている。 瑠里がまだトイレから出てきていないという事は、中で木村さんにメールをしてくれていると信じ、この場を繋ぐことに集中しようと頭を捻った。 「じゃあ取り寄せの種類にも小豆はあるんですね、大好きなんですよ~」 「そ、そうですか……」 「代金お支払いしますんで、食べてみてもいいでしょうか?」 明らかに事務員の目は『早く帰って欲しい』と言っているが、瑠里もまだトイレから出て来てないし、どうしようかと指示を仰ぐように奥を見ている。 上司らしきオジサンが頷くと包みを開けてくれたが、最初に比べて顔色は悪くなっているし、張り詰めた気持ちが爆発しそうな表情にも思える。 室内の微かな気配は三名だがもう一つ小さい何かが気になっていて、更に気配を消すのに長けている者がいるのか、勘違いかもしれないが慎重過ぎ位でないと命を落としかねない。 この茶番を瑠里が戻って来るまで続けるか、敵が我慢しきれず出てくるパターンもあるが、もしトイレが終わるまで出てこなかった時は忍者探偵に指示を仰ぐ作戦にしておいた。 「友達もイタチカステラ大好きなんですよぉ、お取り寄せするには……」 話を続けているとようやく瑠里が戻って来たが、こちらに歩いて来てソファに座ったと同時に犯人達が現れた。 「さっさと帰ればいいものを……大人しくしていたらお前らには手は出さん、静かにしていろ」 一人は事務員を人質に取っていて残り二人は出てきたが、予想ではもう一人いる筈だ。 カステラの話をしていたオバサンは、恐怖からすすり泣きしていて、銃を向けられた私達は両手を上げていた。 「さて、話の続きだが早く預かっている物を出してもらおうか」 「一人づつ死ぬ事になるぞ」 責任者のオジサンはここにはないし、金は渡すから従業員は解放しろと勇気のある発言をしている。 私なら隠し場所も言いたくないし、稼いだお金を持ち去られるのは絶対に嫌だが、そんな要求が強盗に通る筈もない。 すると隠れていたもう一人が出てきて、その場所にお前が案内しろと詰め寄っていた。 昨日見た強盗達よりはベテラン度が上な気がするので、このグループの中ではボスの筈だ。 人質の頭には銃口が当てられているが、そいつは追加で刃物を首に当てている。 「顧客情報は漏れないよう、番号は預けた本人にしか分からないんだ。ここではどうしようもないんです」 「じゃあ預けた本人を連れてきたらいいんだな?どうせそいつも殺すつもりだったし、手間が省ける」 何処かに連絡をする頭を全員が見守っていたが、私達は地味に敵に近づき間合いを見計らっていた。 電話が終わるのが合図だとミリ単位の感覚で近づいていたが、話が終わった時点で瑠里は瞬時に人質の間に割って入り、私はボスの喉に蹴りを入れた。 残りの敵は妹が片づけ一瞬の出来事だったが、ボスは喉を押さえながら蹲りこちらを見て、うめき声をあげていた。
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