イタチクラブ

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通常は一般の人の前で執行は出来ないし、かといって自分の身は守らなければならず、(おぼろ)に頼み護身術の課題を渡されクリアはした。 しかし派手な戦いを避けたい場合、ボコボコにされたフリという新たな戦略は羨ましいし今後に役に立ちそうな気がする。 イザリ屋の薬があれば少々の怪我や傷は治せるし、最小限の痛みで敵にダメージを与えられるなら、こちらの強みにもなりそうだ。 「えっ、まさか般若の好みってああいう見た目の人?」 「違うわ!でもちょっといいなって思ったよ、これからああいう場面になった時にやられた風で敵にダメージを与えるって良くない?」 「能ある鷹は爪を隠す戦法ね、確かにいいがあいつ等に教わると命が足りない気がする」 瑠里の言う事はごもっともで、羨ましくても死神達に教わりたいとは思わないが、急に出来る技でもない。 こちら側の世界も化け物の知り合いしかいないので、弱いフリしてその場を凌ぐ方法なんて使うとは思えない。 とりあえず諦めて屋台に向かうと、人気ナンバーワンと書かれた列に並んだが、流れは比較的スムーズで店員が事前に注文を聞く機転の良さだ。 小豆以外は瑠里に注文を任せ、周りを見ていると賑わっているが、他のイタチカステラの屋台にも沢山並んでいる。 買ってから前を通ると少し安い所もあり、そこへは貧しそうな子供が並んでいて、ニーズに応えていると感心しながら人込みの端に移動した。 出来たてのカステラにスプレーを振り、早速頬張ると生地と小豆が絶妙で人気なのが頷ける。 「うんまっ、コレ。何個でも食べれそう」 「会社のカードで買えるからもう一回並ぶ事も出来るよ」 瑠里はカスタードを食べていたが、他にも混ぜて購入してるようで味見をしようと手を伸ばした時だ。 ザッと私の袋を奪って走り去る後ろ姿に、条件反射で追いかけ口にはレモンチーズケーキ味を即座に入れた。 「待たんかいごらァ、貧乏人から引ったくるなぁ――!」 かなり俊敏に走っているがサイズからして子供の気がするが、狐の世界でも本気で追いかけて取り返した経験がある。 殺されると思ったと言われたので、今度は少しソフトにと心がけながら走っているが、子供は狭い穴や柵をよじ登り姿を眩まそうと頑張っていた。 「ふふん、忍者から逃げられるとでも思っておるのか?奪った事を後悔させてやるわ」 瑠里はノリノリで、私より半歩先を走り盗人イタチにロックオンされている。 始めは速かったがスタミナが切れてきたのか、狭い場所で大人は入れなさそうな経路を選んでいたが、こちらも身体はコンパクトなのでどこまでも追える。 向こうは肩で息をしているが、こちらはイザリ屋仕様の服や靴で、いつもの仕事より全然ラクなのでそろそろ捕まえようと思った時だ。
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