イタチクラブ

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姉妹は色んな世界のチカラを吸収しているし、もしかしたら強く念じれば届くかもしれないと賭けに出たらしい。 「貧乏話に花が咲いた師匠だから、貧乏ビームがキャッチ出来ひたのはも」 瑠里はケーキを頬張りながらそう言っていたが、そんな縁起悪いネーミングのビームは貰いたくない。 こちらもまーちゃんに辿り着くまでの出来事をザッと報告していたが、ヒクイドリの名前を出した時点でフフッと微笑まれた。 「実は翌日旦那と母とでヒクイドリの世界にお邪魔してね……例の女にお礼をさせて貰ったんだよ」 「――へっ?!」 まーちゃん……いや、師匠の横顔は、ヒクイドリの悪ボスに拷問をしていた時の先生方を思わせ身震いした。 さすが地上では敵なしと芭流(ばる)が言うだけあり、鎌イタチの世界のトップの嫁の貫禄が伺える。 「百合達はあのエリアには関係ないと思ってだけど、やはり才能は未知で恐ろしい存在になっていくんだね」 「いや、流れでそうなっただけで妖怪エリアには関わりたくないし、給料の為にせっせと働く姿勢は変わらないよ?将来は事務に異動したいと考えてるもん」 「あははっ、相変わらずだねぇ……あんた達らしい。妖怪エリアかぁ、確かに母には敵わないからなぁ」 紅茶を注いでくれるまーちゃんは、何かを思い出したように、遠くを見る眼をしていた。 貧乏だったが兄弟が沢山居るので、年頃になれば出稼ぎに向かい食いつないで暮らし、まーちゃん宅は『占い』を生業(なりわい)としていたが、親の仕事姿は見た事がなかったらしい。 マミーは自分の代で仕事を廃業しようとしていたので、家族にも秘密で働く姿を見せなかったそうだ。 兄弟や姉妹の中でもチカラが強く出る者とそうでもない者に分かれるが、まーちゃんは強く出ると気付いた母は、早めに出稼ぎに出るよう勧めたらしい。 鎌イタチの世界は当たり前のように刀の訓練は受けるらしいが、まーちゃんはズバ抜けて上達し殺し屋になろうかと迷ったそうだ。 「家族がラクに生活するには金がいるって思ってね」 刀の技術はさることながら、戦う相手の気配や気持ちまで何となく分かるようになると、才能を活かした仕事として向いてると思ったらしい。 「ご飯代が節約出来るから定食屋で働いてたんだけど、そこの客の中に旦那がいてね……」 気持ちを読みとったのか、マミーから殺し屋は止めろと連絡があり、そんな時に芭流(ばる)からデートに誘われたようだ。
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