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「アイドルの授業を放り出して、又勝手にレベルアップ?若干苛立ちを覚えるよ」
透明な部分から空間の外に出ると、アイドルかぶれの死神の目はギラついていて、正義の味方とは思えない。
「女には質問があるみたいだし預かる、でも男は執行だね。組織では下っ端だけど悪事を数えたらキリがないし、自分でも魂みて確認したらいい」
滋さんの背後にはいつの間にか現れた九黎が居たが、少し驚いた目をしていこちらを見ている。
「もう自分の空間を出せるようになったのか、一体何がきっかけで……」
「よ、よく分かりません、女を連れて来たらいいんですか?」
「いや、俺らも中に入れてくれれば対処するが?」
「いえっ、まだ出したてホヤホヤで部屋が散らかってるというか、もう少し慣れてからの方がいいと思うんです」
自分でもおかしな事を言ってると分かるが、チカラを貰った九黎ならまだしも、死神まで入り変な噂が広まっても困る。
出来れば九黎も、空間の話題からは遠ざけ、女を引き渡したら帰って貰いたい気持ちが口をついて出た感じだ。
「……何を言ってるんだ?トラブルでもあるのか」
「そうだ、空間を消して二人を出せばいいんですよね、後はプロにお任せしよう」
いい案を思いついたと手を叩き、戻ろうとした矢先九黎が腕を掴んで小声になった。
「中の誰かが俺を呼んでる気がする……」
「――いいっ?!」
そういえば以前貰ったチカラのトップ達と会わせる弾丸ツアーをしたが、彼は右腕ではあるがトップではない。
しかも銀山犬は先生方の中ではニューフェイスの筈なのに、堂々と意見を言ってるのかと頭の中をグルグル巡っていた。
「何コソコソ話してんの?ダーリンの前でイチャつくのは止めてもらおうか」
「うっさいんだよ!猿芝居に付き合ってる場合じゃないし、女はこの人に渡すからアイドルはクラスに戻ればいいやろが」
死神が怖いとはいえ先生方に比べたら近所の悪ガキレベルなので、啄と話す並みの口の悪さに、彼らがポカンとした顔で見つめていた。
「そんな般若顔して一体何があったっていうの?空間出せたなら喜ばしい事だよね」
「死神の図々しさとしつこさから言って、もしレディの部屋に入る気なら、後で季節のスイーツをたんまりと先生方お供えするって約束しな」
「……はあ、分かりました」
これ以上先生方をお待たせして機嫌を損ねても悪いし、事情を説明したところで引くキャラでもないので、観念し二人まとめて空間に入れてみる事にした。
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